悪魔の運動会
【樋口美咲】
ようやく、スタートラインに立った。
私が1番で、紅組のトップは安藤だ。ついさっきまで、戸田と揉み合いになっていた。私もまさか、こいつが戻ってくるとは__しかもまた同じ白組として。
「戸田、みんなはどうなった?」
安藤の声はどこか、震えていた。
答えを聞きたいような、聞きたくないような__。
けれど裕貴は、薄っすらと笑った。
「俺が全員、始末してやったよ」
と。
その瞬間、安藤が飛びかかり、馬乗りになる。
「嘘を言うな‼︎」
「嘘じゃねぇよ。間宮も相原も、お前のお友達は全部、俺がプールに沈めてやったからな」
「お前っ‼︎」
裕貴のジャージを引っ掴み、何度も頭を地面に叩きつける。
私たちはそれを、呆然と眺めていた。
恐らく、本当のことだろう。
失格となっていったクラスメイトは結局、全員が居なくなった。残っているのは私たち6人だけ。そしてこれから、1人ずつ振るいにかけられて消えていく。
最後の1人になるまで__?
「安藤、やめなって‼︎」
ふと気づくと、立花薫と木崎涼子が止めに入っていた。
競技はもう始まる。
「私が行くわ」
足には自信がある。毎日、走り込んでいるから持久走にも不安はない。
前に歩み出ると、うさぎがゆっくり近づいてきた。
思わず身構えたが、その手を私に差し出す。
それは、リレーのバトンだった。