悪魔の運動会
【立花薫】
リレーもそれぞれが3周目に突入した。
つまり合計でもう、9周グラウンドを走っていることになる。確かに他の2人が走っている間、体を休めることはできるが、そこに屋根も壁もない。
吹きさらしの校庭に、紅白が少し距離を離して待機している。
降り止まない雨が、体を冷やしていく。
雨を含んだ土が足元を緩くさせて、その分、脚力も失われる。
全体的なスピードは上がらず、ただ周回だけが増えていくのが現状だ。
そして、白組よりかなり早く、私は次の走者の伊藤明日香にバトンを渡すのも、いつもと同じ。
それどころか半周あったリードが、更に開いている。
それは、明日香だけが全速力で走っているからか?
裕貴と接触しないよう、少しでも距離を引き離そうと、その小さな体が疾走する。それに加え__もうやる気がないのか、裕貴自身の走りも弱い。
その結果、4週目にして、グラウンド4分の1の差まで迫った。
つまり今、少し前を行く木崎涼子の背中を、紅組の明日香が追いかけている形だ。
これは絶好のチャンスじゃないか?
裕貴が気だるそうにスタートラインに立つ。
木崎涼子のバトンを受け取って走り出すその少し後に、明日香から安藤にバトンが渡る。その瞬間、安藤は追い抜く__恐らく、そう仕向けたのは白組じゃないか?
戸田裕貴を落とすために__。