悪魔の運動会
這って起き上がろうとしたところを、その背中を踏みつけて押さえつける。
「おい、やめろ‼︎」
安藤が怒鳴って駆け寄ってくるのも無視し、2度3度と足を踏み下ろしてやった。
こうなりゃ、向かってくる安藤もろとも半殺しにしてやる‼︎
前に向き直って身構えたが、その必要はなかった。
「助ければ即、失格となります」
その声に絶句する安藤に微笑みかけ、俺はじっくり獲物を料理することにした。
「なに逃げてんだよ‼︎」
フラフラと立ち上がって背を向けた伊藤明日香の髪を引っ掴み、そのまま前に押し倒す。
雨と土が混ざった泥濘(ぬかるみ)に、顔から突っ込む。
「てめぇ、よくもさっきは叩きのめしてくれたな」
サッカーボールのPKのように、軽く助走をつけて明日香の腹を蹴り上げた。
声にならない悲鳴を上げ、体をくの字に曲げる。
「やめろ‼︎」
すぐ側で安藤が叫んだ。
俺は全員に見せつけるために、何度も何度も腹を蹴った。俺に逆らえばこうなるんだ、と__。
腕で腹を庇っているが、すぐにグッタリする。
だが、俺が味わった苦痛はこんなもんじゃない。硬いバットで何度も打ちのめされた。今も感じる痛みは、どこかの骨が折れているからだ。
まだまだ生易しい。
できることなら、同じようにバットでその脳天をかち割って___俺は自分の手元を見下ろす。
そしてバトンを握り直した。