悪魔の運動会


「明日香、逃げて‼︎」


そう叫ぶのは、なぜか俺と同じ白組の樋口美咲だ。


なに敵の応援してんだぁ?


いつもツンとすまして、俺らを蔑んだ目で見る女王様だ。


次はあいつにしよう。


1人ずつ俺様が料理してやる。


まずその前に、芋虫みたいに丸くなっている伊藤明日香にトドメを刺そう。文字通り、このバトンで__。


頭蓋骨を砕いてやろうか?


それとも、口の中に突っ込んでやろうか?


ゆっくりゆっくりと、手の中でバトンを鳴らしながら近づく。


芋虫は醜く体を這って逃げようとする。


足首を蹴ってやると「ひっ⁉︎」と、声を上げて縮まった。


もうこいつは、恐怖に包み込まれている。


立ち上がることも、駆け出すことも、逃げることもできない。


俺の手のひらで、這い回るだけだ。


「おい、いい加減にしろ‼︎」


振り返るとすぐ真後ろで、安藤が俺の肩に手を掛けようとしたところだった。


その手を振り払い、睨みつける。


安藤の目は血走っていた。早くしないと、失格を恐れずに邪魔立てするだろう。


「邪魔だ」とバトンで小突いて制し、俺は足元にうずくまる明日香の頭めがけて、バトンを振り上げた。


その時、明日香が顔を上げる。


__⁉︎



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