悪魔の運動会


「ガッキーじゃない?」


隣に座っている木崎涼子が、俺を見上げて言った。


ん?と、思わず涼子を見つめる。


その凜とした瞳は、俺が【何か】を感じていること、クラス委員としての責任感までお見通しだった。


涼子は、いつも俺の考えていることが分かる。


だから一緒に居て安心できるんだ。


その涼子が「ガッキー」だという。


俺たちの担任の新垣(にいがき)だ。


その馬鹿でかい体のまんま、体育会系の熱い指導で生徒から煙たがれている。


そんな新垣が、今日はやけに静かだ。


いつもならアニソンやド演歌で盛り上がるはず。


でもそれは、わざと熱血漢を演じることで、生徒たちのテンションをコントロールするいつものやり方なのに__。


確かにおかしい。


そういえば、朝から具合が悪そうだった。


「ちょっと見てくる」


俺は首を傾げながら、バスの通路に足を踏み出した。


1番前に座っている、担任のもとへと__。








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