悪魔の運動会


【うさぎ】


足元を見下ろしていた。


足元で横たわる、安藤直人の死体を。


恋人である木崎涼子を守るように、覆い被さっている。


本望だろうか?


きっと安藤は、木崎を勝たせようと思っていたに違いない。それが、誰1人救うことがてきなかった、せめてもの罪滅ぼし。


それなのに、逆に木崎に守られるなんて。


その絶望を、すぐに断ち切ってやったんだ。感謝されてもいいくらいだ。


なんとかなると息巻いていたのに、結果、なに1つ守れなかった。


それどころか__。


拳銃を放り投げ、校舎に向かう。


雨はすっかり降り止んでいた。


けれど、水たまりが広がる地面の上に横たえておくのは忍びないと、さっき運んでおいた。


正面玄関への階段を登るとそこには__樋口美咲が。


ゆっくり屈み、膝をつく。


今にも目を開けて起き出しそうだ。ただ静かに眠っているようででも、息はしていない。


白雪姫のように、キスをしたら生き返るだろうか?


ゴール前で、安藤と木崎が口づけを交わしていたように。


「__美咲」


小さく呟いて、うさぎの頭を取った。


そして、美咲を抱き抱える。


僕の大切な美咲__。









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