悪魔の運動会
【間宮旬】
楽に10回を超えた。
このペースなら、あとは体力勝負だろう。
女子が、中でも寺脇リカの体力だけが心配だが、相原が後ろに付き添って励ましている。ここは任せるしかない。
俺はただ前を向いて、目と鼻の先にいる【犬】を見ていた。
睨んでいるといってもいいだろう。
犬やら猿やら兎やら、可愛らしいキャラクターに扮しているが、こいつらは全員、あのバスの中に居た奴らに違いない。
ガスマスクをし、俺たちをぼろ雑巾のように運び出した張本人だ。
この犬はもしかしたら、俺を殴った奴かもしれない。
そう思うと、視線をそらすことができなかった。
けれど、犬はそんな俺の鋭い眼光を意に返さず、ただ縄を回している。
ゆっくりゆっくり、同じペースで。
「じゅうさーん‼︎」
声を張り上げた。
まだ体力の残っている、一本目が勝負の別れどころだ。一回でも多く跳び、白組にプレッシャーを与える必要がある。
「じゅうよーん‼︎」
その時、犬が笑った。
いや、着ぐるみだからその表情が変わることはない。それなのに、笑った気がした。きっと、中の奴が笑ったんだ__。
縄が、急に速度を落とした。