悪魔の運動会
「フェイントだ‼︎もう一回跳べ‼︎」
慌てて叫ぶと、俺はもう一度、ジャンプをした。
異常にスピードを落とした縄が、足元をすり抜けていく。
だが、その縄が再び頭上を回ることはなかった__。
後ろを振り返ると、幾つもの足に縄が引っかかっている。
誰もが直ぐさま、縄を跨いだ。
「ちょっと‼︎なに引っかかってんのよ‼︎」
世古佳恵が、後ろの寺脇リカを突き飛ばす。誰より小柄なリカは、それだけでふらついた。
「やめなさいよ‼︎」
ふらつきを受け止めた相原が、とっさに2人の間に入る。
俺の目には、世古も縄を踏んでいたように見えたが、戦犯はリカということになったようだ。
「みんな悪い。俺が気づかなかったからだ」
「まだ1回目だ。次また頑張ろう‼︎」
直人が士気を上げると、渋々、世古は引き下がった。
でもまさか、フェイントがあるとは。
これは油断できない。法則があるのか、たまたまなのか?
どちらにしろ、これから1回目を跳ぶ白組をよく観察しなくちゃいけない。
でもそんな俺の心配は、杞憂に終わることになる。