悪魔の運動会
【山寺正人】
ダメだ。勝てっこない。
紅組はたった15回を跳んだだけ。まだ自分たちは跳んでもいないのに、僕はもう諦め掛けていた。
なぜなら__。
「男子が両端で、女子を真ん中にしよう。紅組みたいにバランス良く並んだほうがいい」
僕はそう提案した。
さすが間宮旬だ。そのリードで瞬く間に紅組は整列し、無理がない跳躍をしていた。真似るところは真似なくては。
15回で引っかかったのは、急に縄のペースが落ちたからだ。その点も注意しなくてはならない。たまたまなのか、そうじゃないのかを見極めないといけない。
それなのに僕の声は誰にも届いてはいなかった。
「ガリ勉、なにクソ生意気に俺に指図してんだよ‼︎」
戸田裕貴が今にも殴りかかってくる勢いだ。
まだやる気になっただけマシか?俺はそんな下らねーことはやらねぇ!と息巻いていたが、凍りついた笑顔の兎に睨まれ、渋々、参加することになった。
「この私が縄跳びなんか!」と裕貴より抵抗していたのが、我らが女王の樋口美咲。その美咲も、ウサギの前ではひれ伏したが。
「いや、でも端っこは高く跳ばないと__」
「じゃ、てめぇが跳べや‼︎」
裕貴だけじゃなく、野々村哲也も加勢に加わる。
といって、僕を味方してくれるヤツも居ない。ただでさえ煮えたぎっている裕貴を、下手に刺激したくないのだろう。僕だってそうだ。
兎と猿が、苛立ったように縄を回し始める。
きちんと位置を決めることもないまま、僕たち白組は位置についた。
「せめて、みんなで数を数えよう‼︎」
誰1人返事をしないまま、縄がゆっくり回り始めた。