悪魔の運動会
「いーち‼︎」
声を上げているのは、僕と大野信吾、あと女子の声は木崎涼子か?
2回、3回と跳び上がり、順調なスタートを切った。
せめて紅組のフェイントがあった、15回目まではいきたい。
「よーん‼︎」
僕の前に野球部の小林健で、あとはバラバラ。反対側の端を跳んでいるのは、クラスで最も背の低い伊藤明日香だ。
それでも順調に10回目まできた。
そしてそれは突然。
なんの前触れもなく、縄は地面に横たわる。
「えっ⁉︎」
思わず振り返る。
「てめぇ!なに引っかかってんだよ‼︎」
裕貴がそう詰め寄る相手は__信吾だった。
その大き過ぎる体を小さくし「ごめん」と謝っている。
「また1回目だ。次、頑張ろう‼︎」
これが紅組なら、気持ちがまた一つにまとまるのだろうが、誰も僕の言葉なんか聞いちゃいない。
裕貴は軽く信吾の胸を突き、哲也は舌打ちし、あとはみんな押し黙った。
10回も跳べないなんて__。
紅組が頷きあって位置につくのを、僕は絶望的な思いでただ見ているしかなかった。