悪魔の運動会
40‼︎
あと5回‼︎
41.42。
43‼︎
全員が縄を跳び越える。
だが、縄が全員の足をすり抜けることはなかった。
「おい‼︎またてめぇかよ‼︎」
裕貴が胸ぐらを掴んだ相手は__信吾だった。1回目に引き続き、信吾の足だけが引っかかっている。
「ごめん」
「ごめんじゃねーんだよ‼︎」
完全に怒り心頭な裕貴が、その拳を振り上げた。早くも仲間割れだ。
かといって、体力的に非力な僕はただ成り行きを見守るしかなく、跳び損ねた信吾が殴られるのを、目を閉じて__。
「な、なんだよお前⁉︎離せよ‼︎」
目を開けると、拳は振り下ろされることなく掴まれていた。
___立花薫に。
あの戸田裕貴に怯むことなく、止めに入ったのは女子の立花薫。女子とはいっても、裕貴よりふた回りはでかい。
止められて真っ赤な顔をしているのはきっと、力が拮抗しているから。面目丸潰れで恥ずかしいのだ。
「まだあと1回あるから」
全く動じることなく、薫が言った。
おとなしく引き下がる裕貴。これ以上、辱めを受けたくないからだろう。
僕は胸を撫で下ろした。
ちゃんと庇いあえるメンバーだ。助け合える仲間だ。
「3回目に賭けよう‼︎」
みんなを鼓舞する僕は、気づいていなかった。
礼を言った信吾に向かって、薫が一言__。
「嘘つき」
そう言い放っていたのを。