悪魔の運動会


【山寺正人】


いける‼︎あとちょっと。


15回目、30回目のフェイントを跳び越え、難関である45回目までの速跳びもクリアした。


もう1セット乗り切れば、紅組の80回を超えられる。


「よんじゅうろーく‼︎」


再び数を数えるその声も、大きくなるというもの。


今回は信吾の調子もいいようだ。


樋口美咲と場所を代わり、ちょうど縄の真ん中で跳んでいる。人一倍、体の大きい信吾だから、今は跳びやすいに違いない。


「よんじゅはーち‼︎」


少しずつ、少しずつだが、みんなの心が一つになっている気がする。


同じ目的に向かい、あと30回、縄を飛び越えればいい。


そしたらまたきっと、気持ちがまとまるはずだ。


「よんじゅきゅー‼︎」


僕の前で縄を回すのは、うさぎの着ぐるみ。そのうさぎが、体を傾げた。


「ん?」と、僕の後ろを覗き見たんだ。


縄のスピードに変わりはない。


次のフェイントは60回で、その後に速くなるパートが控えており、50回目の今は体力を温存できるはず。


跳び上がりながら、僕はチラッと後ろを振り返った。


「えっ⁉︎」


思わずそう叫ばないではいられない。


なぜなら。


なぜなら信吾が__。






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