悪魔の運動会
【樋口美咲】
__もうダメ。
何度そう思ったか。
それでも私は強く思った。
やっぱりもうダメ‼︎
運動会?ラジオ体操?大縄跳び?
下らない。ホントに下らない。この私が土臭く汗をかくだなんて、あり得ない。
でもそんな怒りも、覚える余裕すらなかった。
3本目、最後の挑戦。
1本目からもうダメだった。
それを言うなら、1本目の1回目から無理だったんだ。
森本瞳が撃たれて倒れた時、実は1番、側に居たのは私だった。
なにが起こったのか分からなかったが、悲鳴が上がって方々に逃げ出したクラスメイトに引きずられるようにして、私も駆け出した。
その時、激しく転んで足を挫(くじ)いてしまった。
歩くのは問題ない。走るのも、ゆっくりなら大丈夫。ただ__。
「ごじゅーう‼︎」
跳び上がるたびに、右足首に痛みが走る。
それでも私が跳べているのは、右足を庇って左足だけでジャンプしているからだ。縄の中央に居るため、あまり跳躍しなくても済むのも有り難い。
けれどそれももう、限界だった__。
そしてその事を知っているのは、私の目の前で大きな背中を上下に揺らす、大野信吾。
信吾だけが知っている。