悪魔の運動会
1本目も2本目も、縄に引っかかったのは私だ。
それを信吾が庇ってくれた。自分が失敗したとウソをついて、私の代わりにみんなに責められていた。
そんな信吾を見ていると、感謝の気持ちが__。
「ホントにウザい」
__湧き上がるわけがない。
小さい頃、家が隣同士で仲良くしていた。ただそれだけのことだ。
それなのに信吾は、いつまでも幼馴染気分で私に話しかけてくる。
いつからか、それが本当に邪魔くさくなった。だから邪険にあしらった。それなのに、このうどの大木は私に構う。
あの頃のように、私の名を呼ぶんだ__。
「ごじゅいーち‼︎」
もう、左足も上がらない。
「ごじゅにー‼︎」
間違いなく、私は縄に引っかかる。
やっぱりもう__ダメ。
大きく息を吐いて、もう跳ぶことすら諦めた。
縄がゆっくり頭上を越えていく。
その時、スッと視界が広がった。
岩のように前に立ちはだかっていた信吾が、屈んだからだ。
「美咲、乗って」
「えっ?」
「早く‼︎」
縄が足元に下りてくるのを、反射的に跳び上がってやり過ごす。
信吾も屈んだまま跳び上がって再び、縄が丸く回っていく。
「冗談じゃないわ‼︎なに言ってんのよ‼︎」
あり得ないと叫んだ。私が信吾の背中に乗るだなんて、それなら縄に引っかかったほうが__。
「このままなら失格になる‼︎だから早く‼︎」
「失格__?」
膝から崩れ落ちた森本瞳の姿が、脳裏をかすめる。
でも、でも__。