悪魔の運動会


【大野信吾】


「ごじゅうごー‼︎」


僕は軽々と縄を跳び上がった。


どこからともなく、力が湧いてくる。


それは、背中から伝わってくる温もりか、重さなのか、吐息なのか。


樋口美咲を背負った僕は、今なら1万回でも跳べそうだった。


美咲が足首を痛めている。


大縄跳びの1回目、美咲の後ろをキープした僕は、すぐにそのことに気づいた。


案の定、何回も跳ばないうちに縄に引っかかる。だからあえて僕は自分の足で縄を踏んだ。さも自分が引っかかったように。


2回目もそうだ。


美咲が責められるのは耐えられない。僕ならいくら詰(なじ)られても殴られたっていい。ただ、僕の後ろで跳んでいた立花薫にはバレてしまったが。


だから最後の1本、僕は美咲と場所を変わった。


どうしても紅組に勝つ必要があったからだ。もう美咲は80回も跳べない。だから代わりに__。


後ろから、痛みに乱れた呼吸が聞こえてきた時、僕は屈んだ。


恐らく、初めからなら美咲は拒絶しただろう。あと少し、もう少しで80回を超えられる、でももう足は限界だという見極めも大事だった。


__思ったより、美咲は軽かった。


「ごじゅうはーち‼︎」


「みんな‼︎今から少しずつ早くなる‼︎」


山寺正人の声に、全員が身構える。


あと20回。


いける‼︎







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