悪魔の運動会
60回目から縄のスピードが上がった。
美咲を背負って小刻みに跳び上がる。瞬く間に回数が重ねられていく。
だが、ところどころ、縄が靴をかすめていくのが分かった。
自分の体だけじゃない。美咲の重さが、上下運動の感覚を僅かに狂わせていんだ。
引っかからないよう、高さを求めると重さがのし掛かってくる。
70回を目前にして、美咲の重さが体を縛りつけていく。
「__もういいわよ、下ろして」
耳元でぼそりと呟かれる声には、半分の怒りと半分の諦めが含まれている。
「だ、大丈夫‼︎」
「下ろしてよ‼︎」
美咲が僕の肩を叩く。
「下ろさない‼︎」
縄が円を描く中で、僕は心から叫んだ。
「下ろさない、絶対に下ろさない‼︎」
何があっても絶対に。
改めて美咲を背負い直す。
たとえこの足が無くなっても、僕は跳び続ける。
この命が尽きたって構いはしない。
それが美咲のためになるのなら、僕は構いはしない。
だって約束したじゃないか。
美咲、君は覚えてないかもしれないけど、あの時、約束した。
僕が美咲を守るから__。
何があっても絶対に。