悪魔の運動会
【山寺正人】
負けた__。
ダラんと垂れ下がる縄のように、僕たち白組は全員が項垂れていた。
引っかかったのは、またしても大野信吾。
しかも、樋口美咲を背負ったまま跳んでいた。
美咲を庇ったのかは分からないけれど、もう誰も信吾のことを責めたりはしなかった。
疲れ切っていたからだ。
そして__怯えていた。
誰も動かず、勝った紅組でさえ微動だにせず、なにか動きがあるのか黙って窺っていたんだ。
【失格者】という悪魔のようなパワーワードが校庭に響き渡るのを、僕たち全員がある意味、待ち構えていた。
「それでは第1競技を終了します。それぞれ教室にお戻り下さい」
アナウンスが終わると同時に、止めていた息を吐き出す。
よろよろと教室に戻る。
「次、また頑張ろう‼︎」
亡霊のような背中にハッパをたけた。
そうだ、まだ次がある。
もしかしたら直ぐに失格者が出るのかと思ったが、さすがにそれはない。きっと、幾つもの競技を行い、それで紅白で勝敗を決めるのだろう。
だから誰も信吾のことは責めなかった。
良かった。
本当に良かった。
しかし、教室に入った僕たちの安堵感は、見事に打ち砕かれることになる__。