悪魔の運動会
【山寺正人】
「それでは開票を始めます」
全員が画面を食い入るように見ている。
画面下に白組10人の名前が整列した。恐らく、票が入るごとにグラフが伸びていくのだろう。
僕はゴクリと唾を飲み込んだ。
間違いなく、一騎打ちだ。
大野信吾と樋口美咲の戦いになるに違いない。
「__大野信吾」
1票が入ると、ヌッと棒線グラフが伸びた。全ての票が開かれ、最も高いグラフとなった者が失格者となる。
「大野信吾」
早くも2票が入った。
たとえ美咲を庇ったのだとしても、3回とも縄に引っかかったのは覆えしようのない事実。
前に座る信吾の大きな背中が、小さく丸まっているように見える。
「大野信吾」
またグラフが伸びた。
どこまでも広がる地平線に突如、高々と塔がそびえたったような。
もう、勝負は決まった。
あと2票入れば、信吾が失格となる。
「樋口美咲」
初めて違う名前が呼ばれたが、教室の空気は変わらない。
誰もが予想していたからだ。
「大野信吾」
4票が入った。あと1票で失格となる。
そのことに、僕を含め誰もが疑問を抱かなかった。
大野信吾が失格者となることを、誰もが疑わなかったのに__。