悪魔の運動会
【相原友子】
「ただいまより第2競技を始めます。みなさん、校庭にお集まり下さい」
紅組の重苦しい沈黙が破られてもまだ、私たちは椅子から立ち上がらなかった。
体が重い。どこまでも深く沈んでいくようで。
「みんな行こう‼︎」
安藤くんが勢いよく立ち上がり、それに続く間宮くん。2人に引っ張られるように、私たちも校庭に出た。
ちょうど同じ頃、2つ離れた1年4組の教室から、白組が出てくるのが見えた。
その足取りは、泥沼にはまったように鈍い。
見てはいけないものを見たように、視線を逸らす。
1つだけ確認できたらそれで充分だった。
__大野くん。
大野信吾がそこに居ないことを、改めて思い知る。
実は紅組の私たちも【大野信吾】が失格者となったのを知っていた。
しかも、同じチーム内で失格者を決めたことも。誰に何票入ったかも、信吾が美咲を庇って自分に票を入れたことまで、知っていた。
なぜなら、私たち紅組の机の上にも、それぞれタブレットが用意されており、リアルタイムで開票結果を見ていたからだ。
その後、聞こえてきた悲鳴。机が倒れる音。すすり泣きまでもが、はっきりと耳に届いた。
もし競技に負ければ、自分たちで脱落者を決めないといけない__。