悪魔の運動会
綱は、半分だけ息吹を放った。
赤線から向こう、白組が全員、綱を握っていた。
赤線から手前は、紅組が全員、それを呆然と見ていた。
まだ紅組の綱は地面に横たわり、眠ったまま。
気圧されるように俯く。それほどまでに、白組の眼差しは熱を帯びていた。
自分たちの手で裁いた第1競技後の投票。もう、2度と同じことを繰り返したくないという強い気持ちが、綱からひしひしと伝わってくる。
「みんな、俺は誰も失いたくない。でも勝負に負ければ、この中から誰かを失ってしまう。それはもっと耐えられない。だから__だからやろう」
安藤くんはそう言って、綱を掴んだ。
戦うことは喪うこと。それでも戦うことを選んだのは苦渋の選択だったはず。今でも彼は、全員を救いたいと1番に願っている。
それが分かるからこそ、私も綱を握った。
「俺が前に行く。さっきの縄跳びと同じ布陣でいこう。直人、後ろを頼めるか?」
的確に指示を出す間宮くんは、あえて先頭に立った。
刺すように鋭い白組の視線を、一手に引き受ける。
私たち紅組も、全員が綱を持った。
女子には手に余る太さの綱の重みを、ずっしりと感じる。
でも負けられない。
投票なんてしたくない。
誰かを、落とすようなことは__。