悪魔の運動会
【間宮旬】
「それでは綱引き、一本目を始めます」
猿が中央でピストルを構える。
片手は綱に、もう片方の手は空に向かって号砲を放つのだ。
綱がピン‼︎と張り詰め、紅白両組に緊張が走る。
「間宮、ちょうどお前と勝負したかったんだよ」
白組先頭の裕貴が、睨みをきかせる。
「俺もだ。ホントは殴り合いたかったがな」
俺のボルテージも最高潮に達しようという時、猿の指が引き金にかかる__。
「よーい‼︎」
掛け声と共に空砲が発射されるその寸前、一気に白組が綱を引いた。
パン‼︎
ようやく開始の合図が鳴る。
「おいっ‼︎ちょっ、待てよ‼︎」
叫んだ俺は、思い切り引っ張られて前のめりに蹴つまずく。
「フ、フライングだろうが‼︎」
審判でもある猿に訴えたが、知らん顔だ。
なんとか態勢を立て直し、つま先で踏ん張る。
しかし時すでに遅し。ただ地面を滑っていくだけで、どんどんと中央の赤線に近づいていく。
それもそのはず。
白組は腰を限界まで落とし、鬼気迫る表情で綱を引っ張っていた。
そのまま一気に引かれ、俺の足が赤線に触れた__。
「ギャッ‼︎」
一斉に悲鳴が上がり、紅組は全員が綱を離す。白組が雪崩れ込むようにして倒れる。
「なに急に離してんだよ‼︎」
しこたま頭を打ちつけた裕貴が俺に詰め寄るが、俺は自分の掌を愕然と見つめて呟いた。
「__電流が」