悪魔の運動会
【立花薫】
「1本目、白組の勝ち」
よっしゃ‼︎と、ヤンキーが拳を突き上げた。
予定通りだ。最後、急に紅組が綱を離したために、激しく地面に倒れこんだが、それはご愛嬌。
すべて白組に有利に働いている。
「おい、デカ女、次の作戦はなんだ?」
裕貴がニヤついて尋ねてくる。
私はチラリと紅組を見ると、励ましあって並び替えをしているのが分かった。
「もうフライングは使えない。向こうも本気で来るから、次で決めないと負ける。負けたら__綱に電流が流れる」
私の言葉に、全員の顔が引き締まるのが分かった。
「とにかく、腰を下げれるところまで下げて踏ん張ること。後ろは私に任せて」
綱を握り、ぐるぐると腕に巻きつける。
私が専門的なアドバイスができるのには訳があった。
母親の綱引きチームに、よく参加していたからだ。
勝つ方法も知っている。
もし信吾が居たら、そんな心配は皆無だった。余裕で勝てただろう。だが信吾が居ないばかりか、樋口美咲は足を負傷している。
相手より2人少ないと思ったほうがいい。
力では負けている。それならどうすればいいか?
勝つには、テクニックしかない。
正式な試合じゃないから、正式な審判は居ない。綱引きはスタートダッシュが命。フライング覚悟で先に引けば有利だと、1本目は作戦勝ちした。
しかも相手は今、手が痺れている。
勝つなら今しかない‼︎