悪魔の運動会
【安藤直人】
ダメだ‼︎
ま、負ける‼︎
競技前、旬と話し合った結果、白組はまたフライング覚悟で引っ張るだろう。
だからこちらも早めに綱を引いた。
力は競り合っているように見えたが、少しずつ、少しずつ、じりじりと引かれていく。
「もっと腰を落とせ‼︎」
声を上げたが、白組の壁は動かない。地面すれすれに腰を落としているのはきっと、後ろから指示を出す立花薫を信頼しているからだ。
綱じゃない。最後に控えし大岩を動かさないことには、勝つことができない。
それに加え、先ほどの電流の衝撃が蘇る。
ふっと、力が抜けるのが分かった。
その途端、一気に引かれる。
誰かが手を離したんだ。襲いかかる電流への恐怖が、綱から手を離させた__。
もう、旬がデッドラインを踏むのは目に見えている。
負けだ。
さらに力が失われたのは、負けを確信した何人かが綱を離したから。
それでも俺は懸命に引っ張った。
足を突っ張って堪える旬とともに、引っ張った。負けるのが分かっていたが__。
あと数cmで電流が流れるという、その時、急に力の流れが変わった。
白組の引っ張る力が弱まったんだ。
「い、今だ‼︎みんな引けっ‼︎」