悪魔の運動会
【立花薫】
「大丈夫?」
競技前、私にそう尋ねてきたのは、木崎涼子だった。
私が自分の腰に綱を巻きつけるのを、心配そうに見ている。
手のひらの痺れは、未だに取れない。
勝負が見えた2本目、このまま電流にダメージを食らわされるなら縄を離したほうがいいと叫んだが、遅かった。
予想より遥かに痛い。
その綱を、私が腰に巻いているからだろう。もし負けることがあったら、ダメージは手のひらでは済まないからだ。
でも私は鼻で、ふん‼︎と笑ってやった。
「勝つことしか考えてないから」
だから、あんな作戦を提案したんだ。
それに木崎涼子、あんたは頭ごなしに反対したじゃないか。
___私はそんな【卑怯】なことはできないって。
自分だけは特別みたいに、無記名投票するような女だ。それなら、女王風を吹かさなくなった樋口美咲のほうがまだ可愛げがある。自分のせいで信吾が失格となったことが、未だに尾を引いているのか元気がない。
そして先頭に立つのを嫌がる奈々に、私は言い放った。
「じゃ、もしこれで負けるようなことがあったら、私はあんたに投票する。滑ったのは他でもない、あんたの責任だから、多分みんながあんたに投票する。それでもいいわけ?」
半ば脅したようなものだが、泣きべそをかいて奈々は先頭に立った。
奇策を実行するために。
涼子のいう【卑怯な作戦】を決行するために。