悪魔の運動会
3本目が始まると、それまでと同様、引きあった。
いきなり力を移動させるのは、バレる恐れがある。
だから私は少しずつ、少しずつ、手綱を緩めていったんだ。
それを奈々たちの踏ん張りがきかないと思い込んだ紅組が、ここぞとばかりに綱を引く。
確かに踏ん張りは弱い。
演技などする必要がないのは、好都合だ。
まだ【演技】はもう少し先なのだから__。
「今だ‼︎引けっ‼︎」
紅組の間宮旬が、一気に決めにかかった。
その時、綱を離した奈々と明日香が、盛大に叫び声を上げた。
それだけで充分だ。
綱を引っ張っていた力が、消えた。
紅組が引くのをやめたからだ。デッドラインを踏んだ奈々が、電流をその手に受けて悲鳴を上げた。だから自分たちの勝ちだと__力を抜いた。
「今よ!引いて‼︎」
私の合図で息を吹き返した白組が、呆気に取られている紅組を引っ張り返す。
今頃、慌てて綱を掴んでももう遅い__。
「わざと負けた振りをするの。線を踏んで電流が流れたと大きな悲鳴を上げる。自分たちが勝ったと思い込んだ紅組は、すぐに綱を離すはず。そこから一気に形成逆転する。これが私の考えた奇策よ」
作戦は見事、成功した。
本物の電流が、紅組の綱を駆け巡ったからだ__。
「この競技、白組の勝利‼︎」