悪魔の運動会
血だった。
「ちょ、寺脇さん、血が出てる⁉︎」
リカの拳を力づくで開かせると、手のひらが擦れたのか真っ赤に染まっていた。
「あなたたち、これでも寺脇さんが綱を握ってなかったっていうの?必死で離さなかったから、こんなに傷ついてるんじゃないの‼︎血が出るまで握るなんて__」
肩を震わせて泣いているリカを抱きしめ、世古と植松の2人を睨みつけた。
さすがに動揺したのか、2人は押し黙ったが、それも僅かの間だけ。
「でも、さっきの縄跳びも引っかかったし、足手まといよ‼︎」
世古佳恵がそう言えば「私はあんたに投票するから‼︎」と、植松理沙も攻撃の手を止めない。
2人が必要以上にリカに絡むのは、怖いからかもしれない。
これから始まるであろう【投票】に恐れをなしているからだ。
リカを早い段階でターゲットにし、自分たちの注意をそらす。すでに__投票は始まっているといってもいい。
「大丈夫よ、寺脇さん。心配しないで」
優しく声を掛けるが、私自身、どうしていいか分からないし、怖い。
これから誰かを【失格】させないといけない__。
「相原、ちょっといいか?」
安藤くんに呼ばれた。
瞬時に私は悟ったんだ。安藤くんには、なにか手がある。あの顔はそうだ、私はずっと彼を見てきたから分かる。
「久米さん、ちょっと寺脇さんのこと頼めるかしら?そこの水飲み場で、手を洗ってあげてほしいの」
「分かった」
野球部のマネージャーでもある久米茜は、面倒見がいい。
私は、寺脇さんを彼女に任せると、安藤くんの元へと駆け寄った。