悪魔の運動会
「みんな、ちょっと聞いてほしい」
教室に入るとすぐ、安藤くんが私たちに声を掛ける。
「もう時間がない。だから手短に話す。これから投票が始まるが__ボイコットしよう」
「ボイコット⁉︎」
突拍子もない提案に、驚きの声が上がる。
私だってさっき聞いた時にはびっくりした。でも、それには安藤くんなりの考えがあって__。
「無記名投票にするんだ。無記名なら、自分に1票が入る。全員が1票ずつだ」
全員が均等に1票ずつ。
それには、投票しなければいいだけだ。
でも、当然の疑問が投げかけられる。
「それで全員が失格にならないのか?」
「何度でも投票をやり直させられるとか?」
西川浩二と笠井周平の2人が、野球部さながらのストレートな豪速球を投げてきた。
安藤くんは逃げない。
その球がたとえ体に当たっても、全力で受け止める人だ。
「正直、それはやってみないと分からない。全員が失格になる恐れはないと思う。それなら競技が終わってしまうから」
「でも確証はないじゃない‼︎」
世古佳恵が食いついた。リカだけじゃ責め足りないのか、ややヒステリー気味だ。
「ああ、確かに確証はない」
「ほら、それなら誰かを投票したほうがいいわ‼︎みんなを危険にさらすくらいなら、誰か1人を失格者にしたほうがいい‼︎」
佳恵がそう言って送った視線の先には、縮こまっている寺脇リカがいた。
あくまでリカに投票する気だ。