悪魔の運動会
「みんな、俺を信じてくれ」
安藤くんが、私たち一人一人の顔を見回す。
首を傾げるもの、プイッと横を向くもの、頷くもの、様々だった。
「俺は直人に賛同する」
間宮くんははっきりと言った。それはもう清々しいくらいに。
「私も安藤くんの意見に賛成よ。安藤くんの言う通り、まだ運動会は始まったばかり。ここで紅組全員を失格になんかするわけがないわ。一度は試してみてもいいんじゃない?」
最後の問いかけは、未だに強硬な姿勢を崩さない世古佳恵に向けてだ。
女子は私が後押しするしかない。
これくらいだもの、私が安藤くんのためにできることは。
きっと、安藤くんは木崎さんからヒントを得たんだ。
大縄跳びで負け、唯一、無記名投票__すなわち、自分に投票した木崎涼子。大野くんが樋口さんを庇って自分に入れたのとはワケが違う。
私たちとは別れてしまっても、木崎さんは1人で戦っている。
その姿勢には感服するものがあった。
だからせめて私は、全力で安藤くんを信じ、応援するのみ。
「__分かったわ」
世古さんが、小さく頷いた。
「よし、これで決まりだ‼︎全員、無記名投票だ」
一つ手を叩いた安藤くんが、私に向かって「ありがとう」と声に出さずに言った。
どうなるかは分からない。
でも私は、彼を信じる。
心から__。