悪魔の運動会


「それでは投票を行なって頂きます」


校内放送だけが虚しく吹き抜けていく。


私たちは全員、無記名投票をすると決めた。だからタブレットにそれぞれの名前が記されても、身動き一つ取らなかったのに__。


「おい世古‼︎お前なに触ってんだよ!」


突然、間宮くんが声を上げた。


「なによ‼︎ちょっとどんなのか見てみただけじゃない‼︎私を疑うっていうの⁉︎」


世古佳恵も負けてはいない。


後ろの席の間宮くんを、立ち上がって睨みつけている。


制限時間は30秒を切った。


2人の睨み合いが続くが、刻々と時間は過ぎていく。


信じるしかない。


あえて私も安藤くんも、後ろのみんなを振り向かなかった。


一致団結したからだ。


世古さんだってきっと、触ってみただけ。だから私はみんなを信じる。


そして、制限時間がなくなった__。


「それでは開票いたします」


画面が切り替わり、横一線に名前が並ぶ。


開票が終わった後も何も変わらないはず。平等を求めた紅組の、それが決意表明だから。


「無記名投票、安藤直人」


安藤くんの棒グラフが伸びた。


「無記名投票、相原友子」


私がそれに並ぶ。


「無記名投票、間宮旬」


さらに間宮くんが続く。


これでいい。このまま横並びで全員が手と手を取り合って__。














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