スタードロップス
「そのコンクールを境に、
人前でピアノを弾くことが怖くなったの。


そして、その時の自由曲、
私のモーツァルトきらきら星変奏曲、
深月のベートーヴェン月光第3楽章は、
今でも聞いちゃダメな気がして、
弾いたり聞いたりすることはできないんだ。



ははっ、ありそうな理由でしょ?」



滲む視界を目を細めて歪めたら、
視界が急に塞がれた。


「なんで、辛い時に笑うの。
君が辛い時に笑うのは、なんか悲しい。
俺、泣いていいって言った。
俺の前で強がるのはやめてよ。」



こんなにも暖かくて、
胸が苦しくて、
ドキドキして、
こんなの初めてだ。



“嬉しいより上の気持ちだなんて”



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