淡雪
「このアマッ」
男衆が、奈緒を抑え込もうとした。
が、次の瞬間、奈緒は身体を捻ると同時に、懐剣を片手で思い切り振り上げた。
ぱっと血が飛ぶ。
再び悲鳴が上がった。
「音羽っ!!」
思わず黒坂は音羽に駆け寄った。
倒れ込む音羽を抱きとめる。
顔が、赤く染まっていた。
騒然とする中、奈緒はたちまち男衆らに捕まえられる。
「音羽、大丈夫か」
ぐったりとしたまま動かない音羽に寒気を覚え、黒坂は腕の中の音羽に呼び掛けた。
首筋から顎の辺りにかけて噴き出した血が、音羽の美しい顔を染める。
「何てことを……」
き、と黒坂が顔を上げたとき、いきなり奈緒が、けたたましい笑い声をあげた。
「ざまぁみさらせ! 花街の女郎のくせに、外で男と会うからこんなことになるんだ! 女郎は大人しく、死ぬまで中で燻ってろってんだ!」
あはははは、と身体を仰け反らせて笑う奈緒は、狂女にしか見えない。
ざわついていた場が凍り付いた。
男衆が、奈緒を黙らそうと必死になる。
いくら狂った女の戯言とはいえ、花魁ともあろう者が外で間夫と会っているなどと噂されたら堪らない。
「大体、男衆でもない男が、さも親しいように駆けつける辺りがおかしいだろ! その男は何なんだい?」
男衆に羽交い絞めにされながらも、奈緒は叫び続ける。
男衆が、奈緒を抑え込もうとした。
が、次の瞬間、奈緒は身体を捻ると同時に、懐剣を片手で思い切り振り上げた。
ぱっと血が飛ぶ。
再び悲鳴が上がった。
「音羽っ!!」
思わず黒坂は音羽に駆け寄った。
倒れ込む音羽を抱きとめる。
顔が、赤く染まっていた。
騒然とする中、奈緒はたちまち男衆らに捕まえられる。
「音羽、大丈夫か」
ぐったりとしたまま動かない音羽に寒気を覚え、黒坂は腕の中の音羽に呼び掛けた。
首筋から顎の辺りにかけて噴き出した血が、音羽の美しい顔を染める。
「何てことを……」
き、と黒坂が顔を上げたとき、いきなり奈緒が、けたたましい笑い声をあげた。
「ざまぁみさらせ! 花街の女郎のくせに、外で男と会うからこんなことになるんだ! 女郎は大人しく、死ぬまで中で燻ってろってんだ!」
あはははは、と身体を仰け反らせて笑う奈緒は、狂女にしか見えない。
ざわついていた場が凍り付いた。
男衆が、奈緒を黙らそうと必死になる。
いくら狂った女の戯言とはいえ、花魁ともあろう者が外で間夫と会っているなどと噂されたら堪らない。
「大体、男衆でもない男が、さも親しいように駆けつける辺りがおかしいだろ! その男は何なんだい?」
男衆に羽交い絞めにされながらも、奈緒は叫び続ける。