過去にあるもの

何もいえなかった

その日ずっと考えていた
私は志保が好き、志保の幸せばかり思っていて
自分は二の次だったから
志保になんていえばいいか
隠しているほうがいいか
悩んでいた


もうひとつ
康弘の真剣な目を初めてみた気がして
何もいえなかった私に言葉は見当たらなかった


気づいたら私は康弘を避けるようになった


「明奈~聞いて、最近康君が冷たいんだけど
何も話してくれないの。何か聞いてない?」

「そうなの?なんも聞いてないよ
っていうか最近あいつ相談してこないからさ~」



志保から相談されるたびに胸が痛んだ


目が合わないように避けていた康弘
委員会の帰りに康弘が廊下で待ち伏せしていた

私は通りたくなかった
できれば違う廊下があればそっちから帰りたかった


早歩きでシカトするように下を向いて
歩いた

通り過ぎようとした瞬間
腕を掴れた


「俺、お前のこと本気で思ってるから」
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