ほろ甘くささやいて
♪
仕事帰りの一杯立ち飲み屋。
そこにたまたま居合わせた同期の男と一杯やることになった。
「ブッファ~。
残業帰りの一杯は最高ですなぁ、珠樹クン」
「お前なあ…
うちの課長(オッサン)と同じこと言ってんぞ。
ガツガツ仕事ばっかりしやがって。
…世間はさ、バレンタインだとかでハシャいでるのにな」
呆れ顔でコップをカウンターに置いたのは、同期の珠樹(たまき)。
チャラチャラ遊んでいるくせに、いつも私より一つ上の営業成績を上げてくるフトドキな奴だ。
軽く頭を小突かれながらも、私はフンと鼻を鳴らした。
「はっ、男になんか媚び売って何になるのさ。
仕事の方が、断然面白いもんね」
「綿貫サンは相変わらずだな。男よりも仕事ってか」
「とーぜん。
仕事は私を裏切らないもん。努力には、必ず結果が着いてくる!
大体ね、バレンタインなぞ菓子屋の陰謀。そんなモノに踊らされるほど、私は暇じゃありませんて」
「ふぅん。
渡す相手がいないだけ、じゃなくて?」
うぐっ。
こいつめ、気にしていることを…
拗ねて唇を尖らせ、コップの日本酒をちぴっと舐める。
「…どうせ
私にチョコレートなんて貰って喜ぶ奴はいないですよーだ」
自分が皆に何て言われてるかくらい知っている。
キツい女だ、お局様だ…
何さ、困った時にはみんな頼ってくる癖に。
と、彼がポツリと言った。
「俺は_欲しいな」
「は?」
「欲しい、って言ったんだよ。
綿貫サンのチョコレート」
ぶーーっ。
私は思わず、口にしたお酒を吹き出した。
「ばっ、な、何言ってんの。
あんたなんか、後輩ちゃんだの、どこぞのネーチャンから山ほど貰うんでしょうがっ」
全く。
からかうのも大概にして欲しい。
ただでさえ、無駄に色気を振り撒いている男が。
微酔いの艷っぽい表情で、甘い声して言うもんだから…
ちょっと本気にしちゃうじゃないか。
と、
「ジョーダンじゃないよ、
…見たいんだ」
気がつけば、いつの間にか彼のお顔が近づいている。
ひっ!
内心慌てふためきつつも何とか平静を装って、私はやっと尋ね返した。
「な、何を…」
ピンクに頬を染めたまま、彼は悪戯っぽく微笑んだ。
「綿貫サンの、女の顔」
…負けました。
ーおわりー
そこにたまたま居合わせた同期の男と一杯やることになった。
「ブッファ~。
残業帰りの一杯は最高ですなぁ、珠樹クン」
「お前なあ…
うちの課長(オッサン)と同じこと言ってんぞ。
ガツガツ仕事ばっかりしやがって。
…世間はさ、バレンタインだとかでハシャいでるのにな」
呆れ顔でコップをカウンターに置いたのは、同期の珠樹(たまき)。
チャラチャラ遊んでいるくせに、いつも私より一つ上の営業成績を上げてくるフトドキな奴だ。
軽く頭を小突かれながらも、私はフンと鼻を鳴らした。
「はっ、男になんか媚び売って何になるのさ。
仕事の方が、断然面白いもんね」
「綿貫サンは相変わらずだな。男よりも仕事ってか」
「とーぜん。
仕事は私を裏切らないもん。努力には、必ず結果が着いてくる!
大体ね、バレンタインなぞ菓子屋の陰謀。そんなモノに踊らされるほど、私は暇じゃありませんて」
「ふぅん。
渡す相手がいないだけ、じゃなくて?」
うぐっ。
こいつめ、気にしていることを…
拗ねて唇を尖らせ、コップの日本酒をちぴっと舐める。
「…どうせ
私にチョコレートなんて貰って喜ぶ奴はいないですよーだ」
自分が皆に何て言われてるかくらい知っている。
キツい女だ、お局様だ…
何さ、困った時にはみんな頼ってくる癖に。
と、彼がポツリと言った。
「俺は_欲しいな」
「は?」
「欲しい、って言ったんだよ。
綿貫サンのチョコレート」
ぶーーっ。
私は思わず、口にしたお酒を吹き出した。
「ばっ、な、何言ってんの。
あんたなんか、後輩ちゃんだの、どこぞのネーチャンから山ほど貰うんでしょうがっ」
全く。
からかうのも大概にして欲しい。
ただでさえ、無駄に色気を振り撒いている男が。
微酔いの艷っぽい表情で、甘い声して言うもんだから…
ちょっと本気にしちゃうじゃないか。
と、
「ジョーダンじゃないよ、
…見たいんだ」
気がつけば、いつの間にか彼のお顔が近づいている。
ひっ!
内心慌てふためきつつも何とか平静を装って、私はやっと尋ね返した。
「な、何を…」
ピンクに頬を染めたまま、彼は悪戯っぽく微笑んだ。
「綿貫サンの、女の顔」
…負けました。
ーおわりー