ハイスペックな王子は。
壁ドンの想像はしたけれど、ブームも落ち着き、現実で体験するとは思わなかった。
そして、自分がする側だとも思わなかった。
「ごめんね?俺が上だとバレちゃうから……本当にありがとう。助かったよ。」
立ち上がり、私の身体を少し離しながら、上條さんが背が高くて良かったよと言う。
ん?
「あれ……なんで名前。」
なんで私の名前を知っているんだろう?
「あぁ、実は上條さんのこと気になってたんだ。俺に目もくれず、細やかな仕事する子だなぁって。」
真面目でいいなと思った、と彼は言った。
そう言った顔が何とも言えなくキュンときて、一生言わないと思っていた言葉が、バレンタインということもあってか私の口を滑り出す。