3年後、あの約束の続き
会社のビルでエレベーターを待っていると、後ろから「おはようございます」と声がする。
田野畑さんだ。

「あぁ、田野畑さんおはよう」

「渡辺さん大丈夫ですか?金曜日そのまま直帰したって・・・」

そういえばそうだった。

「ちょっと貧血でね。土日休んだから大丈夫」


そう言うと‐また後ろから「おはようございます」と声がする。
私は本日2回目。


「瀬崎さんおはようございます」

あくまで今日は初対面。あくまで今は同僚。


「渡辺さん大丈夫?買ってきたのは俺のデスクに置いてあるから」

「申し訳ありませんでした。助かります」

「俺そのまま午前中は営業部に行くね。勝手に取っていいから」

全部今朝聞いた話だ。
きっと章は12時過ぎに戻ってきて、外出の準備をする私に「俺も出るから一緒にランチ行こっか」と誘うんだろう。


「わかりました。ありがとうございます」

少し笑いそうになりながら、私はいつものような口調で話す。
笑ってはいけない。
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