3年後、あの約束の続き
「渡辺さん、もう帰りますか?」
後輩の田野畑さんが声をかける。
田野畑 結(たのはた ゆい)私より2つ下なので今年25歳か。
「業務終わったし帰りますね。田野畑さんもそろそろ…」
田野畑さんは遮るように
「やー彼氏がもうすぐ終わるみたいなんで、それに合わせて帰ります」
小声で私に耳打ちした。
私はくすっと笑って「じゃあね」と言ってフロアを後にした。
ビルのエントランスに向かうエレベーターの中でも、動悸が止まらない。
さっき田野畑さんとは、普通に会話ができていた。大丈夫なはずだ。
彼が・・・この会社にいるのは、入社して1年経った頃に知った。
本社で大抜擢されたというニュースが、遠く離れた日本のここにも届いたのだ。
数多くある、世界中の支社の末端のここにも。
彼の名前は‐瀬崎 章(せざき あきら)26歳。
北欧家具雑貨メーカーの「Iris bukett」経営企画販売促進部の若きエースだ。
私の名前は‐渡辺まなみ
「Iris bukett」の日本支社で主に展示会の企画や発案をしている。
私は、もう『まなみ』として生きている。
きっと章は私に、気付かない。
むしろ気付かないことを願っている。
‐過去はとっくに捨てたのだから。
後輩の田野畑さんが声をかける。
田野畑 結(たのはた ゆい)私より2つ下なので今年25歳か。
「業務終わったし帰りますね。田野畑さんもそろそろ…」
田野畑さんは遮るように
「やー彼氏がもうすぐ終わるみたいなんで、それに合わせて帰ります」
小声で私に耳打ちした。
私はくすっと笑って「じゃあね」と言ってフロアを後にした。
ビルのエントランスに向かうエレベーターの中でも、動悸が止まらない。
さっき田野畑さんとは、普通に会話ができていた。大丈夫なはずだ。
彼が・・・この会社にいるのは、入社して1年経った頃に知った。
本社で大抜擢されたというニュースが、遠く離れた日本のここにも届いたのだ。
数多くある、世界中の支社の末端のここにも。
彼の名前は‐瀬崎 章(せざき あきら)26歳。
北欧家具雑貨メーカーの「Iris bukett」経営企画販売促進部の若きエースだ。
私の名前は‐渡辺まなみ
「Iris bukett」の日本支社で主に展示会の企画や発案をしている。
私は、もう『まなみ』として生きている。
きっと章は私に、気付かない。
むしろ気付かないことを願っている。
‐過去はとっくに捨てたのだから。