3年後、あの約束の続き
ふと後ろを見ると、橋本がこっちに来ている。

「渡辺、ほらアウトレットの資料まとめたやつ。先月からの」
そう言って橋本が資料を私の机に置く。
ちなみに橋本は主に直営のアウトレット店の管理をしている。

「ありがと。さすが早いね」

そう言うと、橋本はしゃがみ小声で私に耳打ちする。

「瀬崎さん、やりづらそうだけど大丈夫?」

大丈夫じゃない、と言いたいのは山々だ。

「ま、何とかやりますよ」
表情を崩さずに、そう返事する。


「おふたりさま、何を話してるんですか?」

席に戻る章が(おそらく)営業用スマイルを浮かべて、私と橋本の肩を叩く。


「瀬崎さん、渡辺さんのことお気に入りですね」
橋本が立ちあがって言う。

章はまた営業用(であろう)スマイルを浮かべて
「女王の氷が溶けるのに興味あるんですけどねぇ。橋本さんもそうじゃないです?」

橋本はふっと笑った。
「4年間、溶けたところ見たことないですよ」
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