3年後、あの約束の続き
ぼんやりと町を眺めていると、章が話し始めた。

「『瀬崎家』って言うのは、昔はここから見える土地全てを管理している大地主だったんだ。
ただ戦後徐々に売りに出して、ばあばが子供を育てるために、ほとんどを売り払ってしまった。
だから不動産にはコネがあって、あそこが売りに出されてすぐにお父さんが買い戻したんだ」


章の説明を聞きながら、妙に納得することがあった。

「そりゃ私、いじめられるわけだ・・・」

ばあば様が『元地主の奥さん』ってことは知っていたが、まさかそこまでの大地主だったとは。


章はクスクスっと笑う。

「でも俺も姉ちゃんも、歪まずに育ったのは君のご両親のおかげだと思う。
君たち家族は、俺らを『瀬崎』の人間だからとか、そんなこと関係なしに接してくれて、ちゃんと叱ってくれたからね。 だから、お父さんも1番信用してたんだよ。
あそこを買い戻して、君たちを待つって聞かなかった」


そっか。おじさんも、私達のことを思ってくれてたんだ。


「でも私は、もうこの町には戻れない。堂々とは帰ってこれない」

そう呟くと、章は静かに「そうだね」と言った。
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