3年後、あの約束の続き
定時が過ぎ、私は帰り支度をはじめる。

部長が私に話しかける。
「渡辺さん、ゴールデンウィークの出勤は3日でいい?」

うちの企画部も他の部も、ゴールデンウィークにあるアウトレットのセールに駆り出される。
その代わりに5月か6月に代休が貰えるしくみだ。

「わかりました、いいですよ」

「じゃ、瀬崎くんも3日ね」

「はい、わかりました」

・・・別々でいいのだが。

「では、30分になるし帰りますね」

そう言って席を立とうとすると、章が私の手を引っ張る。

「渡辺さん、今日の予定は?」

「・・・別にありませんが」

「じゃあ良かった。会って欲しいんだ」

はてなマークが浮かぶ。

「俺の友達。ポルトガル人。ブラジルだったらポルトガル語できるでしょ?英語が言うほど流暢じゃない」

そうきたか。

「小学生レベルですよ、ポルトガル語は。
訛りも酷いしポルトガル人が聞き取れるかわからないですよ」

「まぁそれでも母国語に飢えてるからさ。何なら筆談でもいいし」

スペイン人で十分だろう、という言葉が浮かぶが・・・きっと私を試してるんだろう。
(ちなみにポルトガル語とスペイン語はかなり似ている)


「わかりました、会いましょう」
きっと断っても角が立つ。
私は素直に受け入れることにした。
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