3年後、あの約束の続き
そして部長がいきなり爆弾を投下して帰って行った。

「渡辺さん、何かカタログの翻訳、営業部が明日朝までに欲しいってさ。よろしく」

・・・まじか、と思いつつも「わかりました」と返事をする。
本当は明後日までの3日間で仕上げる予定だった、はずだ。


とりあえず緊急でない仕事を投げ出して、翻訳作業に取りかかる。


3日に分けて組んだ行程は見事に砕け散った。



何が翻訳作業が大変なのか。
それは『日本語表現の多彩さ』だろうか。

例文を出すと、ディスプレイ棚の説明で
『壁に取り付けることも、足を付けて床に置くこともできます。』
こういう訳があるとしよう。

さすがにこれをそのままカタログに使うわけには行かない。

多少微妙な表現は違えど『日本人の感性』と『うちの会社のカラー』に合わせた言葉を選ばなければいけないからた。


私だと『壁に取り付けたり、足を取り付ければ立派なディスプレイ棚にも』と訳すわけだが。

もっとも、英語同士の会話の方が楽だったりもする。
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