3年後、あの約束の続き
「思っていたよりも広い」
章がぼそっと言った。

「ま、毎年のことだからねー。連休だとかなり売れるんだけど、今年は祝日が被ったから残念だわ」
原田さんが会場を見渡してそう言った。


するとさっきから席を外していた橋本が戻ってきた。
隣には担当の大槻さん-私達より少し年上の男性の方 が居た。

「みなさんお久しぶりです。あ、瀬崎さんですね?はじめまして。篠塚家具の大槻です」
そう言って大槻さんは挨拶している。

「瀬崎です、初めまして」
章もにこやかな笑顔で挨拶している。

「では、事務所でお話しましょう。みなさんどうぞ」
そう言って大槻さんを先頭に、事務所まで私達を案内する。

章以外は全員来た事があるので、迷い無くスタスタ歩く。
通路を抜けて従業員専用口の向こう側が、篠塚家具の事務所だ。


慣れた感じで歩いていたが-従業員専用口の扉の所で、何かが引っかかってつまずき転びそうになる。
「あ・・・」

つまずいて転んだと思ったが・・・誰かに抱えられていた。
ふと顔を上げると章だった。

「軽いね、女王。気をつけてね」
そう言って私を立たせて、前の人たちに続いて行った。


-ずるいなぁ、この人

つまずいた以上に、章の顔にドキドキしてしまう。
やっぱり、ちょっとずるい。
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