3年後、あの約束の続き
私と章は再び山形さんに挨拶をして、会社の玄関を出てタクシーへと向かう。

トルソーが後部座席の右に置かれていたので
「瀬崎さん、助手席へどうぞ」

そう言って後部座席に乗った。
すると-章も後部座席に乗り込む。

「大丈夫、座れる」

・・・大丈夫じゃない。近い。
トルソーと章に挟まれて、身動きができないままタクシーは発進する。


南下するタクシー内は、また私の地獄がやってくる。
ズボン越しではあるが、章と膝が触れ合っている。
決して不自然ではないので、何も言えない。

ふと章を見ると、章は車窓から景色を眺めていた。
横顔を見ると、胸がチクチク痛みはじめる。


-この人を、もう1度独占できたら・・・なんて。
そんなことは夢物語なのである。


すると章がクルっと振り返る。
「ごめんね、窓側が良かったね」


窓側じゃなくて助手席に座ってください、とは言いたくなるが「そうですね」とだけ言って視線をまっすぐに戻した。


-この人は、何を思っているのだろうか
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