穴・あな
みんな自宅に帰って、麻美子ちゃんがお風呂に入って、私もお風呂に入って、30分経った。
私と麻美子ちゃんは、私が持っているホラーゲームをやっていた。

突然だが、私は幽霊は苦手だ。
海外のグロテスクなだけのホラーは大丈夫だが、知らないうちに少しずつ、しかし確実に、ひたひたと迫りくるジャパニーズホラーが心底苦手なのである。

最近は、「生きている人間が一番怖い」というようなオチの映画も多いので、そういう設定に助かっている。
人間ではなく、得体の知れない、なにか。私はそれが怖くてたまらない。

そんな私が、なぜ、こんなゲームを買ったかというと、怖がる女の子が見たかったからだ。

自分の変態さというか、自分の可愛い女の子に対する執着みたいなものに、自分でもあきれてしまう。
しかし、そんな自己嫌悪も、私の腕にくっついて離れない麻美子ちゃんを見れた幸福感で吹きとんだ。

うん、生きてて、良かった。

そう思った刹那、急に画面が、どアップの幽霊の顔でいっぱいになった。

「「ギャー!」」

私と麻美子ちゃんは抱き合って叫んだ。
麻美子ちゃんは私のBカップの胸に顔を埋めている。

心臓が早鐘のように鳴っている。もちろん麻美子ちゃんに抱きつかれているからだ。

「心臓、すごい音だよっ!」
麻美子ちゃんが驚いた様子で言った。

「だって・・・怖かったし!」
私はそう言って、下を向いて麻美子ちゃんを抱きしめた。
よかった。心拍数が上がっている理由を、ゲームの幽霊のせいにできた。

緊張の糸が切れ、2人で笑いあった。
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