散る桜
10


「うん。あのね」


初めて向き合った祖母に、何をどう話していいのか、わたしは言葉を選びながら、小声で言った。


「川の向こうに、不思議な場所を見つけたの」


それは、散歩の途中で見つけた場所だった。

四方を山桜に囲まれた空間は、下草すら生えていない。そこにいると、鳥の気配も、うるさいほどに鳴いていた蝉の声すら聞こえなかった。そして。
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