散る桜
11


「しいちゃん。その場所に近付いたらいけないよ。そこはインチだからね。帰って来られなくなってしまうのよ」

いつもは優しい祖母が、咎めるような厳しい声でそう言った。


「インチって?」

「ケガレた土地のこと」


祖母は指で空に、『忌地』と書いた。


「しいちゃんは、忌地に近付いたらいけないよ」
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