散る桜



あの時のことは、よく覚えていない。


大人たちは、わたしのために色々と手を尽くしてくれたようだったが、心と身体がばらばらになってしまったわたしを、どうにもできなかったそうだ。


わたしは療養というカタチで、母の田舎に預けられることとなった。


祖母は、古く大きな家に一人で暮らしていた。

家は山に囲まれていて、自然豊かと言えば聞こえもいいが、それ以外に特筆することはなく、人の気配さえも皆無のような場所だった。
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