散る桜


***


「しいちゃん。散歩に行くなら、お帽子被りなさいね」


あの日も、夏の太陽はぎらぎらと照りつけて、アスファルトからは陽炎が揺らめいていた光景を思い出す。


暑い日のことだった。


祖母は玄関で、白いリボンのついた麦わら帽子を、わたしの頭に乗せた。

わたしは、返事もせずに家を出た。
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