散る桜



といっても、特に行き先があったわけでもない。


あの頃のわたしは祖母だけでなく、わたしに関わる全ての人間を、いないものとして振る舞っていたように思う。

周りの大人たちは、そんなわたしのことを、ただ黙って許してくれていた。


彼らも本当は、傷ついていたのかも知れない。


子供だったわたしは、自分のことだけに手一杯で、落ち着いて周りを見る余裕すら持てないでいた。
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