LINK ー愛も罪も 番外編ー
3
「ちょっと、何時まで寝てるの? いい加減に起きなさい。大学に遅れるわよ!」
大声を挙げながら、階段を上ってくる足音が聞こえる。
「ん…んん……」
なんだかやたらと眠い。
出かける支度をした母親が、騒がしく陽弥の部屋のドアを開けた。
「キヨっ! 母さん、もう仕事に行くからね。あんたに構ってる暇は無いんだからっ!」
腰に手を当てて、布団を被っている陽弥を睨みつける。
「ん…、いってらっしゃい。オレは、今日休むわ」
陽弥は頭から布団を被ったまま返事をする。
「あんた、単位は足りてるの? 卒業出来ないなんてなっても知らないから。留年させる金なんて、この家には無いんだからね!」
言うと同時に、丸まっている布団の上から陽弥の腰の辺りを叩いた。陽弥はもぞもぞと布団から顔を出すと、
「大丈夫。心配ないって」
と寝ぼけ顔で言った。
そんな陽弥を見て、母親は大きく溜息を吐いてから、部屋を出て行った。
それにしても眠い。何でこんなに眠いんだ?
眠くて中々開ける事が出来ない目の、片方だけを開けてみた。前にあるテーブルには薬の箱が置いてあった。
?。頭痛薬⁉ あれを飲んだからこんなに眠いのか? 全然覚えてないや。
陽弥は寝返りを討って、片腕を布団から出した。その袖がスウェットで無い事に気づく。昨夜は服も着替えずに寝てしまったらしい。
あれ? なんだろう、これ。痣?
左手首に、うっすらと青黒い痣があった。
どっかで打ったのかな? それにしては不自然な…、誰かに掴まれたのか、指の痕が並んでるみたいに見える。何処でこんな……? 昨日は大学からそのまま家へ帰って来て……ダメだ、覚えてないや。まぁ、いいか。
頭痛薬がまだ効いているのか、兎に角眠い。頭が働かない。陽弥は痣の事など気にせず、再び、眠りへと落ちて行く。