あなたを好きにならないための三箇条




「最低、キモい、有り得ない」




吐き捨てるように頬を軽く押さえる彼を蔑むように睨み付ける

ひっぱたいた勢いで2人の間には大きく距離ができた

私はこれ以上この男を近づかせるつもりはない




「ごめんごめん」

しかし私の威嚇に彼はモノともしない様子で。




「ホント、有り得ないっ」

私はゴシゴシと無理やり奪われた唇を服の袖で拭う。



ありえない
ありえない
ありえない…っ





普通キスする?

突然まったく知らない人にキスされた女子の気持ちがわかるか…!?



「…気持ち悪いっ」



また、強く唇を擦る




「…え、女子を散々口説いときながら、ファーストキスだったりする?」


苦笑いで私を見つめる少し右頬が左頬に比べて赤い彼は呟いた






「…っ、そんなわけあるか!馬鹿!」


あまりにも遠慮ない質問に苛立って仕方ない

思い出したくない過去まで思い出させないでよ






「んじゃあ…別に…」
軽く笑う彼。






しかし、突如私の視界が歪んだ

ぐらぐらして気持ち悪い
酔ったような心地に囚われて立てなくなる

まるで、子供の頃遊びで野球のバットのぐるぐる回った後みたいな



擦りすぎて唇がヒリヒリする
それでも足に力が入らなくて
私はその場に座り込んだ


「…っおい!急になんだよ」


心配そうな彼の顔が視界の端に映る
それでもグワンと歪んだ世界は変わることなく


「…気持ち、悪い」


彼に向けた最後の暴言が
今の私の状況か

それともその『気持ち悪い』には二つの意味を成すのか…。







プツリと私の意識はたやすく途絶えた





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